本の紹介
作・絵 | はせがわ ゆうじ作 |
出版社 | 中央公論新社 |
価格 | 1,400円+税 |
サイズ・ページ数 | 13.1㎝×19.1㎝ ・ 36p |
読み聞かせの年齢・時間の目安 | 3歳から・8分 |
あらすじ
TikTokで300万回再生された、ある仔牛の話
第7回未来屋えほん大賞受賞
もうすぐ食べられることが決まっている仔牛が、最後に一目お母さんに会いに行く話。お母さんのいる牧場に着くと、お母さんは新しい仔牛たちと幸せそうにしていて・・・
読み聞かせポイント
- 「もうじき」という意味がわからない子がいるので、読み始める時に題名を言いつつ付け足しておくと安心です。
「もうじきたべられるぼく、もうすぐ食べられるってことだね」など - 文字が少ないので、絵をよく見られるようにゆっくり読む、読んでもすぐページをめくらないといった工夫をしましょう。
- 「よく、この隙間から脱走したな」のところでは、丸いくりぬきの絵に合わせて、読みながら指で丸く示すとよく見てくれます。
- 途中、文字のないページも多いので、時間をとって子どもの反応を見ながらめくるようにしましょう。案外、絵を全部見きれていなくて理解できていません。
- お母さん牛が、「ぼく」に気づいたことを理解できない子もいるので、「気づいた?」と一声かけてもいいかもしれません。
- 邪道とは思いますが、全部読み終わった後に、お母さん牛が「ぼく」を追いかけているシーンの絵のページをもう一度開きます。夕焼け雲だけど、お母さん牛と「ぼく」が出会えたんだよ、と知らせてあげます。
子どもの反応
あまり響かないな、という印象です。
切符を買って電車に乗るシーンでは「このまま逃げちゃえばいいのに」ともっともな意見を2年生が言っていました。
柵から逃げ出したという面白いシーンの後だからか、牧草をたくさん食べさせられてこんなに太ったというシーンでは「食べなきゃよかったのに」なんて言っている子もいました。そんな選択肢はないということがまだ理解できていないから仕方ない発言なのでしょうね。年齢によって意見が大きく変わると思います。
読み終わった後に「もう牛は食べられないなー」と言っている子もいましたが、友だちに「豚も鳥も同じだよ」と言われ「そっかー」と言っていました。少しでも、そういう会話のきっかけになれば食育の本としてはいいのかなと思います。
最後にゆうやげ雲のお母さん牛と「ぼく」が向かい合わせになっているシーンを見せると、「わぁー」と声が上がり笑顔になります。
読んでみて思うこと
「話題の本だ」と書店で立ち読みして泣きそうになりました。早速購入して読み聞かせしたのですが、子どもの反応はイマイチ。一緒に見てくれている先生方には「いい本ですね」と言われます。
そこで、よく考えてみました。
私が泣きそうになったのは、お母さん牛が仔牛に気づいて全力で電車を追いかける後ろ姿のシーンです。必死な様子の伝わる素晴らしい絵です。今見ても泣きそうです。次のページの、遠ざかる電車と、柵の端まで追いかけたんだなとわかる絵も切ないです。ですが、これは母子の別れの話。
全体は生き物の命をもらっているという食育の話。
最後の一言は、自分の命を大事にしてほしいというメッセージ。
ちょっと色々な要素がありすぎて、子どもたちが気持ちの焦点をどこに持っていったらいいのかわからないのかもしれません。
大人は色々な情報を処理して「これは食育の本だね」となりますが、子どもには情報が多すぎたのかなと思います。
- 可愛らしい絵でほっこり系なのかなと思いきや割と過酷な話(そのミスマッチもありだとは思いますが)
- 柵から抜け出すコミカルなシーン
- 他の動物との違い
- 大好きなお母さんとの別れ
- お母さんへの気遣い
- 覚悟
- 食べる人へのメッセージ
思慮深い、ちょっと大人な考えの子どもには響いてくれると思います。また、すぐには響かなくても、成長していく中で気づいていくのもいいのかなとも思います。
自分の感じかたと、子どもたちの温度差を久しぶりに感じた絵本でした。私の力不足で、もっと上手に読めたら違ったのかもしれません。
勝 誠ニさんが歌っていました。この歌、泣きます。
世のお母さんには切ない絵本