本の紹介
作・絵 | 小林深雪 にかいどう青 長谷川まりる 如月かずさ 水野瑠見 菅野雪虫 作 鎌谷悠希 画・漫画 |
出版社 | 講談社 |
価格 | 1,300円+税 |
サイズ・ページ数 | 12.8㎝×18.8㎝ ・240p |
推奨年齢 | 11歳から中学生 |
本の装丁
書店を探索中に、絵が綺麗で子どもにウケそうだなと思い手に取ってみたところ、ジェンダーフリーの話との事で学校図書館にピッタリではと興味を持ちました。
題名のColorsがネオン風でオシャレだったり、人物の顔立ちや服装がジェンダーレスなところがなんとなく韓国アイドルを思い浮かばせ、子どもにウケそう(受け入れられそう)だなぁと思います。表紙の絵って大事ですよね。
背景の額縁の絵が中の話に関係した絵になっているので読んだ後も楽しめます。また、ソフトカバーなので持ち運びしやすくページをめくりやすいのも良いですね。
あらすじ
Peony 鎌谷悠希
母親のシャクヤクの匂いのシャンプーが好きだが、使っては行けない風潮に悩む男の子。ある日思い切って使っていくが、その日に限って鼻のきくクラスメイトの男子の席の前になってしまいます。
女子校か、共学か。それが問題だ! 小林深雪
女子校に進学した女の子。でも、好きな馴染みの男の子は共学へ。そこで幼馴染は恋人ができてしまいます。その相手とは・・・
チョコレートの香りがするね にかいどう青
親友の女の子、ミッコのことが好きなアユ。ミッコには男の子の彼氏がいます。親友との関係を壊したくないので告白はしません。そんなアユには他にもみんなと違うことが・・・
チキンとプラム 長谷川まりる
父のことが嫌いではないが、思春期に入ったすももには父の性的な冗談がきつい。すももは自分が気にしなければ仲の良い家族で居られると思いますが、だんだん家に帰りたくなくなります。そんな時、友達になったみやびにも何か家にいたくないわけがありそうです。
いわないふたり 如月かずさ
レズビアンの中学生カップル。中3でクラスが分かれ、すれ違いから真結は不安になります。そんな中、恋人の千歳は自分たちの関係をカミングアウトしないかと提案してきます。決心が付かぬまま修学旅行へ。
羽つきステップ 水野瑠見
この本唯一の中学生男子が主人公です。大希は自分でも自覚しているが「コドモっぽい」。気になる幼馴染の女の子はいるが、最近はイケメン男子とよくお喋りしています。幼馴染の女の子と姉の生理を通してちょっとづつ大人になっていこうと思うようになる話。
いつかアニワの灯台に 菅野雪虫
普通の女の子栞。母親や親戚に問題を抱える安珠。アンジュの従姉妹の咲留。優等生の茜。性別による行き詰まる日常にもがく女の子たちの話です。
子どもの反応
まだ、貸し出ししていないので、貸し出しを始めたら聞いて書き込みます。
読んでみて思うこと
Peony 鎌谷悠希
綺麗な絵で、この後の小説の内容を匂わせる物語の序章といった感じです。この漫画を立ち読みして購入したり、図書館で借りることを決める子も多いと思います。
女子校か、共学か。それが問題だ! 小林深雪
YA本と言えども小学校中学年から読めそうな文体でびっくりしました。しかし、1話目の導入と捉えたら読みやすくていいのかなと思います。逆に私がジェンダーフリーの話とのことで気負っていたのかもしれません。読みやすく、理解しやすく丁寧に伝えていると思います。
チョコレートの香りがするね にかいどう青
六つの小説の中で、一番突っ込んだ話だと思います。中学生、高校生くらいが物語としても読んでも良いと思います。途中、アユのみんなと違うことがわかり驚きます。みんなと違うことを知った後、もう一度読み返してみると、アユの兄との会話でアユが兄に大事にされていることがわかり嬉しくなります。
チキンとプラム 長谷川まりる
この思春期の感情もジェンダーフリーの話になるんだなと気づかせてくれました。こんな父親、私も嫌だわなんて思いながら読みました。お友だちについて深くは書かれていませんが、身近にあるかも知れないことだなと思います。それを周りが普通に感じてしまう危険を感じました。
いわないふたり 如月かずさ
すれ違ったり不安になったりと普通に男女の話としても読めます。ということは、女子同士だからという偏見があったのかと気づきました。わざわざカミングアウトしなくてはいられない世の中に疑問を持つ子が増えますように。
羽つきステップ 水野瑠見
流石に今時の男子は生理を「ちょこっと血がでるだけ」とは思っていないでしょうが、男子にも読んでもらいたい話です。読みやすく爽やかな読後感でした。
いつかアニワの灯台に 菅野雪虫
この話はジェンダー以外にもいろんな問題がありそう。と思いながら読んでいましたが、やはり根っこには女性だから・・・というものがあるのかなと思いました。地方の田舎に残っていそうな考え方ですよね。一見違う問題かなと思うことにもジェンダーが絡んでいることが日常に溢れていることを認識しました。お話的には船に乗り込むところや灯台に憧れる様子など叙情的な話で素敵でした。
全体の感想
全話中学生の話。小学校高学年にもわかりやすく丁寧に話が進んでいくので安心して図書室に置くことができると思います。読みやすいですが、ジェンダーフリーに対しての色々な話が詰まっているので、これもジェンダーフリーなのかと気づくきっかけになると思います。
身近な兄弟が味方になってくれる話も多くほっとします。
講談社さんのこの『YA!ENTERTAINMENT』シリーズは高学年女子に人気です。
まだ大人じゃないけど、もう子供でもない・・・。そんなヤングアダルト向けのシリーズ
こんな違いがあるなんて知りませんでした。
ジェンダーレスとは、社会的・文化的差別をなくすこと。男女の区別がない状態。
ジェンダーフリーとは、男性と女性が性別による役割を背負わず、自由に能力を発揮すること
ジェンダーフリー小説入門書としておすすめです